一昨年（2016）の年末に突然、イスラエルから「聖書の３分の２はヘブライ語で書かれたんだから、君はヘブライ語を学習するべきだ！」とやけに熱心な勧誘電話がかかってきて、イスラエル大学のヘブライ語の単位が認定されると言うので「それはお得かもな」とついついオンライン・クラスに足かけ５年も拘束されることになった、聖書ヘブライ語クラス。昨年（2017年）は入門のレベルAの単位を取得しましたが、今年は、その上のレベルBのサーティフィケーションを頂きました。

１月から１レベルの受講を開始し、日本時間で、毎週日曜夜９時に始まるクラスは念入りに予習しなければついて行けない難度と速度で、殆ど休み（１回だけありました）無く30回出席し続けるの大変さもあり、ドロップアウト率も高くクラスで最後まで残ったのは、アマゾンの原住民の言葉を研究しているカナダ在住のベンジャミンと、わたしの２人だけでした。喩えで表現するならば、毎週、日曜日は毒杯を煽るような気分の過酷さです。その甲斐あって、クラスは来年はレベルC、そしてD、Eまで続きますが、超入門レベルなら日本でヘブライ語を学習したい方々に教授するための力もついてきたと思います。

さて、こちらは言わずと知れた、ウェイト・スミス版デッキのTEMPERANCE『節制』。このタロットのプロデュサーであるウェイトとイラストレーターのパメラ・スミスは結社ゴールデンドーンのメンバーでしたので、その影響を受けています。内部から分裂したこの結社には詩人のウィリアム・バトラー・イェイツ団員であったり当時の英国の気鋭が集まる極でもありました。また同時期に在籍して嵐のように暴れて去ったクロウリーのデッキも、この結社の流れを発展させていて、クロウリー版では全てにヘブライ文字が配置されているのは有名ですね。一方、ウェイト・スミス版ではクロウリーのようなヘブライ文字の積極的な活用は見られませんが、このTEMPERANCE『節制』には重要なヘブライ・ワードが配置され、ゴールデンドーンの線上にこのデッキがあることを、控えめに主張しています。

それはこのヘブライ語の単語です。ヤーヴェもしくは、イェホヴァ（エホバ）と発音されると西欧世界や日本でも考えられていますが、旧約聖書の唯一神の名であり、神聖なる文字列なのでテトラグラマトンとも呼ばれますが、ヘブライ人は神明を呼ぶのを憚ったので、今でもユダヤ人はアドナーイと発音し直接文字から発音する事はありません。アドナーイとは「The LORD＝主」と言う意味です。

わたしは、１度、死語となってナチスの大虐殺を生き抜いたユダヤ人の民族再興のシンボルとして復興され、近現代の研究でロジカルに解明されているヘブライ語の文字自体に過度な神秘性を読み取る必要性を感じませんが、19世紀の世紀末への不安が拡がり、神秘主義が隆盛した時代には、ヘブライ語の知識を得る機会や教材も限られていたはずですから、それはそれは神秘的な象徴だったのではないかと思います。

ウェイト・スミス版でそのテトラグラマトンは、節制の天使の衣の胸元のドレープのラインに擬態し、黙して示されています。わたしの友人のタロットリーダーはみな知っているようですが、それが、ヘブライ語聖書の中でも特別な神名単語であることを知っておくことは、大切でないはずはありませんので、この記事を読まれた機会に知識を高めて頂けましたら幸いです。

יהוה

因みに、単語を構成している文字は、右から（ヘブライ語は右から読み書きします）ヨッド・へー・ヴァゥ・へーとなります。